パパラチャ。

tarosource2006-01-21

@oku@のタンスの中に入っているパパラチャは、この店で働くようになってから身に着けるようになったが、実は何年も前に作ってもらいながらも、身につけなかったという不思議な石だ。なんでだろうねぇ・・・。(謎)

パパラチャ

初めてこの言葉を知ったのは、宝石の鑑定&鑑別事務所に入社してからだ。ルビーとサファイアが同じ石だということは知っていた。赤いコランダムをルビー、それ以外の色合いをサファイア、と呼ぶことは知っていたのだが。

パパラチャ・サファイア

そんなイエローとかバイオレットといった単純な色の名前ではなくて、特別な名前のつくサファイアがあるなんて、私は知らなかった。
蓮の花の色を表す、オレンジッシュ・ピンクの艶やかな色合い。

ところが。
私の勤めていた鑑別事務所はひじょうに「パパラチャ」という言葉を鑑別書に載せることに対して、慎重な会社だった。
ジュエリー・メーカーというのは、当然のことながら、自分のところの商品であるジュエリーの価値を上げたいと思っている。そのための鑑別書、鑑定書だ。「パパラチャ」という名前で鑑別書を作ってもらうのと、「ピンクサファイア」「オレンジサファイア」という名前で鑑別書を作ってもらうのでは、店頭で売られる商品の価値が全然異なる。だからジュエリー・メーカーは躍起になる。
ダイヤモンドのグレード(いわゆる4C)は、少しでも高く。
ピンキッシュ・ブラウンダイヤモンドではなくて、ブラウニッシュ・ピンクダイヤモンド。
パールはラウンドシェイプ。
なぜ、鑑別書に「パライバ・トルマリン」「メキシコ・オパール」と表記してくれないのか(産地名は基本的に記載できない。分析をしない限り)。
バイオレット・サファイアをルビーに表記できないのか(現在は鑑別表記方法が変わって、「コランダム」と表記することになったはず)。
・・・・・・まあ、いろいろと、売る側と、鑑別&鑑定する側には熾烈な争いがあるわけですよ。

パパラチャもそう。

パパラチャっていうのはな、オレンジッシュ・ピンクの色合い、この微妙で繊細な色合いなんだぞ」というのが当時の社長の言葉だった。他にも理由はあるのだろうが、よほどのことでもなければ、どんな大口のお客様だろうと、頑として「パパラチャ・サファイア」と呼ばなかったし、逆に言えば、社長のいう「パパラチャ・サファイア」と出会ったときの美しさといったら・・・その艶やかで、蓮の花びらにたたずむ仏様の世界を思わせるような、幻想的な輝きだった


時は流れ。
私は鑑定&鑑別会社を辞めた。今でもいい会社だとは思うけれど、信じられないくらい給料が安いかった(苦笑)。
給料の高さに目がくらんだのと、せっかくだから他の宝飾の仕事をしたくって、展示会の販売員になってみた。(笑)

てくてくと御徒町をあるとき歩いていた。
ふと、一軒の宝石屋に入った。
中にはインド人たちが。
なぜか、昔からインド人受けがいいのだが、このときも恐る恐る入ってみた宝石屋に、「なに人?日本人に見えないね?」と言われつつ(どーせ、色が黒いよ、私は・・・)、気軽に話しかけてくれていた。

さて。
私が宝飾出身ということで、たまにお客様から宝石のお問い合わせをいただく。よくいただくご質問の中で1番多いのは値段についてだけれど、こればっかりはなんともいえない。
原石もそうだけれど、宝石も仕入れのレートによって値段は違うしねぇ。
一応、「この石のこのグレードだったらこれくらいかな?」というのがあるけれど・・・実はこの当時はそんなこと知らなかった。

一口に宝飾業界といってもいろいろで。
宝石の仕入れの値段なんて、仕入れをする会社でなければわからない。当然、鑑定&鑑別事務所では石の仕入れなんてしないし、そのあとの展示会の販売なんて、何倍もの仲介手数料を取られた先のジュエリーの値段しか知らない。私が「宝石の仕入れの値段」というのがやっとわかって理解したのは、さらに数年後のジュエリー・メーカーに勤めたときだ。(さて、私は一体何回転職しているでしょう?)

話は戻る。
ふらりと入ったインド人のお店(ルース屋)で。
なんと「パパラチャ」に出会った!!
思わず目が釘付けの私に、インド人の店員さんたちは気がついて、「ほ〜ら、パパラチャだよ〜」といろいろ見せてくれる。
ところが。
なぜか、ピンキッシュ・オレンジのサファイアばかり見せるのだ。
それは違う
パパラチャはオレンジッシュ・ピンク色のサファイアなのよ!!

そんなのパパラチャじゃないやいっ!ウソツキっ!!
と、「パパラチャはこれよ!」とオレンジッシュ・ピンクのサファイアを指差すとインド人たちはたじたじ。鑑定・鑑別事務所では宝石のピンからキリまで見ていたんだいっ!だまされないぞ!!
という気迫で、無理矢理オレンジッシュ・ピンクのサファイアを出させる。
さらに。
10数万円と書かれた石を、○万円にまで負けさせた(内緒)。ちなみに1ct以上ある。

アタシってすごーーーーーいv

・・・・と、このときは、ご満悦だった。
後に、インド人たちの方が上手だったということを知るんだけどね。(^^;
まあ、そんなわけで「後で知ったら、値引き額もインド人の手のひらの中」ということだったわけだけれど、そーゆー失敗をしたからこそ、いまがあるわけで。
失敗を「楽しい」と思わせてくれたのが、このパパラチャだった。

その後、パパラチャは処理の問題で週刊誌に叩かれ、パパラチャを取り扱っていた宝飾業界全体に被害が及んだわけだけれど、私のパパラチャは誰がなんと言おうと「パパラチャ」である。ご自慢のコだ。

他人から見れば、「失敗した」「損をした」と思われるような石なのかもしれないけれど、でも別にいいのだv
そしてそれは私も一緒。はたから見れば、「パラサイト・シングル」だし、「行かず後家」だし「フリーター」だけれど(税金は払っているぞ)。でも別にいいのだv

過去に悔いはないし、現在は楽しいし、未来に夢がある。それってベストな状態だよねぇ?ということを教えてくれているのが、私のパパラチャなのだv