Ⅰ 魔術師

tarosource2005-09-04

あるときふとした折に、クリスタルのタロットカードなるものを見る機会があった。
ちょっと期待していたのだが、商品のカタログ写真のようなクリスタルがカードになっているだけで、なんかイマジネーションをそそられない、自分には合わないカードだなと思った。

じゃあ、自分がもし、クリスタルのタロットカードを作るとしたら?と考えてみる。
そうすると、意外と難しいことに気が付いた。

とりあえずメジャー・アルカナとクリスタルを対応させて考える。
1の魔術師はすぐに閃いた。

ガラス。

ガラスって、錬金術だと思う。
いくつもの物質が溶けて、炎に包まれて変性する。復活と再生のクリスタル。
古代の人々が、地中から見出した美しい鉱物を、人間の手で作ったのがガラス。
古代エジプトの美術工芸品を見るとガラスが多く見られるし、他の文明にも使われている。
ツタンカーメンの黄金のマスクにもある「ファイアンス」という焼き物は良く知られていますよね。
ガラスのビーズで作られたアクセサリーは王侯貴族の持ち物だったし、近代になってもエナメルというのがある。
さらには教会のステンドグラス・・・神の栄光を称える光の芸術にガラスを最初に使った人は、そして最初に見た人は、どんな思いがしたのだろう?
そう考えると、ガラスの輝き、光のプリズムって、他の鉱物とはまた違う感情が生じる。それをガラスのエネルギーと感じる人もいるかもしれない。

そんなガラスの成り立ち、美しさは、まさに錬金術であり、タロットの魔術師に相当するよね、と思う。

もちろん、この魔術師は、逆位置で読むと「ペテン師」になる。
宝石・鉱物の模造品。「エネルギーが良い」というのと、「天然」か「人工」かというものは別問題のはずなのに、なんか一緒になっているような、なっていないような曖昧さ。
ガラスにも魔術師同様、「なんとなく不思議さにごまかされているような」ところがある。

ところが、人間って、意外と「不思議で曖昧」なものが好きなんだよね。星占いとか、迷信とか、普通にスピリチュラルな人ではなくても、なんとなく不思議な中に生きている。
たぶん人間自体が「不思議で曖昧」な生き物だからなのだろう。すべての感情をすっきりと片付けられている人間がいたら、それはおそらくロボットだろうと思う。

「ガラス」「魔術師」「人間」
それらは、不思議で曖昧なものを生み出す。
だけど、ただただ「不思議で曖昧」な中だけにいるわけではない。
人間は何かを生み出す力を持っているし、
ガラスも、窓やコップ、あらゆるところで、様々な形に変成して存在し、
魔術師は「再開(Restart)」と「創造」をキーワードにしている。


今回、店ではピンクやブルー、グリーンのガラスを置いてみたけれど。
石とは違う存在感は、夜の闇の中で圧倒的な輝きをみせている。
「夜の闇の中で輝きを放つ」・・・・これもまた、「魔術師」ならではの威力なのかもしれない。