スパイダー・ウェブ・オブシディアン狂想曲

tarosource2007-10-31

最初に、この話には、店も@オーナー@にも関係の無い話です、と言っておきます。私が自分の金を払って勝手に調べたことなので、本当に本当に関係の無い話です。

少し前、私が店を休んでいるとある日に、某石屋の社長さんが来店し、スパイダー・ウェブ・オブシディアンの丸玉を買われたそうな。仮にXさん、とさせていただきます。

その後、Xさんからメールが来たことがことの始まり。
そのメールには、「1晩握ってみたんだけれど、オブシディアンとは違う気がする。これって鑑定出していますか?カラー・オブシディアンに似ている」という内容。
・・・・うーん?カラー・オブシディアンって、人工ガラスよねぇ???
人工ガラスと、スパイダー・ウェブ・オブシディアン(以下、略してスパイダーとする)は、まったくどう見ても違いませんか〜?
それから、仮にも石屋の経営者が「1晩触って・・・」というのが、なんとも。別にメタフィジカルなことな事に関して否定はしませんが、石屋同士のなのだから、そこはもうちょっと理論的な根拠で物を話そうよ、と思ってしまった。
それから、「鑑定」というのは、ダイヤモンドのグレーディングに使う言葉であって、色石の判定は「鑑別」というのだよ。プロなのだからその辺はちゃんと言葉を使い分けて欲しいもの(単に、私がこだわっているだけなのかも・・・)。

もう一度書くけれど、Xさんのところで売られていた、色付き人工ガラスとスパイダーは全然違う
私も@オーナー@も、あのガラスを見た瞬間、「ああ、天然っぽい記述しているけれど人工なんだろうな」と思った。それは別にエネルギーとかパワーの問題ではない。
あ、ちなみに「アンダーラ(アンダラ?)」のことではありません。
私は鑑定・鑑別機関(以下「ラボ」とする)で働いていたし、@オーナー@も宝石の鑑定士(以下GGとする)のタイトルを持っている。そこで勉強した中で、「天然ガラス」にはありえない色合い、気泡の入り方、色むらなどなど・・・を見た上で、これは「天然ガラス」ではありえないだろうな、と考える。
以前、ジャワ・ガラスをラボで分析を依頼したときも、その辺の判断からきたもので、結果、天然ガラスではありえないAlの数値の高さがでたので、そのジャワ・ガラスは「人工」となったわけ・・・・なのは、そのときweb上で発表したとおり。

もちろん、その人工ガラスとパワー&エネルギー云々は別だ。
私は私なりに、人工ガラスは、錬金術的なものを感じる。もともとガラスも合成宝石も好きで、個人的なコレクションの中には合成宝石も数多くある。店でも「人工です」と書いてガラスを売ったこともある。

ただ、そういった、パワー&エネルギーといったメタフィジカルで主観的なものと、鑑別&分析といったフィジカルで客観的なものはまったく別物で、そこは石屋同士ならばわけましょうよ、というのが私の考えだ。

私からすれば、例えば「オレンジジュース」というカテゴリーの中にある、「果汁100%のDoleのオレンジ・ジュース」と、「バヤリースのオレンジジュース」とはまったく違うものだということ。
・・・昔、100%オレンジジュースを自販機で買ったときに、バヤリースが出てきて、自販機を設置している酒屋に「これ、100%のじゃないんだけれど・・・」と言ったら、「でもオレンジジュースじゃん、一緒でしょ」と言われて、なにか違う!って思ったことがあるのと一緒(実話です)よね・・・・って、それはいいとして。

そこで、私は@オーナー@に「Xさんからのメールどうします?」と尋ねたところ、
スパイダーは海外のwebサイトで検索しても、天然石として扱われているし、この石はノーマルなオブシディアンができる生成中または、できたその後で、別の他種鉱物が入ってできたものとされている。そもそも一般のユーザー様ならともかく、お互いプロなんだから自分で気になるなら調べるでしょう」と言って、Xさんにメールで@オーナー@は返信していた。
「ラボに鑑別を依頼しますか?」とも訊いたけれど、@オーナー@は「オブシディアンの外観的特長が備わっている以上、あえて高いお金をかけてラボに依頼する必要は無い」ということ。

まあね〜、色石ソーティングだけでもお金かかるし、分析はとても高い(練馬の研究所様のHPにも載っている、分析機械のことです)。ここでいちいちお金かけてコストを高くして、そして石の値段もさらに高く・・・というのはやはり、ちょっとね。(苦笑)

で、ここで話が終わるかと思ったら、再びXさんからメールが。
「Aラボに分析を依頼したら、丸玉が大きすぎて、機械に入らず、分析できませんでした。でもAラボの人は、『これはオブシディアンではなく岩石』といっていましたよ」ということ。

なるほど〜、Aラボはそう判断したのか〜、なんでそう判断したのか、なんとなくわかるけれど・・・でも「岩石」って・・・・オブシディアンも「岩石」に分類されるんだけれどなぁ・・・その辺を踏まえて、AラボもXさんもどのような見解になったのか教えてほしいなぁ・・・・
と思ったけれど、Tianのスタッフに過ぎない私が、石屋経営者のXさんに意見はいえないし・・・・@オーナー@に「どうします?」とやはり再度訊いたら@オーナー@も「宝飾と鉱物では定義の違いもあるし、『岩石』と判断されたのであれば、それは『天然』ということ。カラー・オブシディアンの類とは明らかに違う」とのこと。
・・・・確かに。ラボが『岩石』って判断したなら、人工ガラスとは違うよねぇ。

そんなやり取りをした後、@オーナー@はミュンヘンへ旅立っていった・・・



でも・・・・・・なんか私の気持ちが釈然としないんだよね。

ということはだ、私が個人的に勝手にラボへ自己負担で依頼すればいいのだな

で、今度は、私の昔の職場、Bラボに「色石ソーティングして」と依頼。さらに「もしオブシディアンと判断できないのであれば、Cラボへ分析出してください」とまで依頼。

私のいた職場はねぇ・・・小さいラボだから、分析機械を持っていないんですよ・・・(トホホ)。AとCのラボは大手なので分析機械を持っているんだけれどね。
でも、分析機械というのは、以前もこのブログで書いたけれど、普段の鑑別では必要ない。
例えば、ガラスが天然か人工かを調べたり、パライバ・トルマリンがブラジル産なのかアフリカ産なのかといった産地特定のときなどに使用する。

さらに、AラボへもFAXと電話
Aラボは過去の経験から、FAX入れても、わざわざ電話やFAXで返信してくれるということは絶対ない。(笑)

そしてこのころ、私が自分の石で送ったところ・・・Bラボから「これ、分析かけなくてもオブシディアンですよ。Cラボのスタッフにも一応見せましたが、分析する必要は無いって言っていましたけれど?」という連絡が入っていた

で、Aラボに電話で確認。「先日、Xさんが依頼したスパイダーがオブシディアンと鑑別されなかったようですが、いかなる理由ですか?BとCのラボはオブシディアンという判断を出しましたよ」と言った結果・・・・




ま、予想通りの結論がでました。(笑)


注意:写真の石はいずれも私個人の私物の石です。お間違えなく。
最初に、オブシディアンとは何ぞや?という定義は・・・Wikipediaを参照して下さい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E6%9B%9C%E7%9F%B3
こんな感じだと・・まさに「ガラス」っていう感じ。(これはボリビア産のオブシディアン)

こういう「宝飾的」なものはラボも簡単に鑑別出るのだけれど、鉱物的なものは、もともとラボにとって専門外なので苦手だったりする。


今回、XさんがAラボに依頼した石はこんな感じのスパイダー(あくまでも感じです。同一のものは無いですから)。

いろいろとグリーンの筋(スパイダー・ウェブ)が入っている上に、黒い部分ももやがかかったような・・・ようは黒い部分にも、スパイダーになっているグリーンの他種鉱物が混ざっているようなもの。
こうなってしまうと、顕微鏡による拡大検査をしても色々なものが混ざっていて・・・・そもそも「不透明」という段階で、色々なものが混ざりすぎている上に、さらに緑色のなにかが黒い部分にも・・・なので、なにがなんだか・・・の状態。
ということは、光学的検査といったことをしても正確な数値が出ない。
比重も・・・Xさんの丸玉は大きすぎて、出せないだろうけれど、そもそも他種鉱物が混ざりすぎていて数値が全然でないはず。

そして、今回、私がBラボに提出し、Cラボにも見せたスパイダー。(写真悪いわね・・・)

黒い部分は、すっきりと黒く、オブシディアンらしい色合い。緑色の筋もくっきり(ちょっと、これは細いけれど)。

そうすると、この黒い部分に混ざっている他種鉱物の含有量は極めて少なく、拡大検査や光学的検査がきちんと取れて「オブシディアンである」と判明。

だから〜、「スパイダー・ウェブ・オブシディアン」という商品名の中には、オブシディアンの要素が多く入っているのと、少ないのとの差があるって言うことになるわけだ
なので、XさんやAラボの判断も正しいし、こちら側もB&Cラボも正しいわけになる。



この場合・・・「この商品名『スパイダー・ウェブ・オブシディアン』には、天然のため、オブシディアンの含有量に差があります」って説明書きいれたほうがいいのかなぁ・・・?
それとも質問されたときに答えればいいのかなぁ・・・?

うーん、それから@オーナー@にはこの件言った方が良いのだろうか?
でも「勝手なことして〜!」って怒られてしまいそうだし〜。でもXさんに対しては説明する必要があるし・・・ああ、でもなぁ・・・

個人的には、スパイダーの鑑別の結論が出てすっきりしたのだけれど、これからどうしようかとまだまだ悩んでいるのでした・・・